君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
郁人さんが言い終わる前に、朝食のクロワッサンを口に放り込みながら真紘さんがはねつけた。こういったパーティーには配偶者を連れて行くのが一般的らしい。

「だが、結婚したのをまだ公にはしていないし……」

「この機会にひとまず個別に伝えればいい。結婚式や披露宴については後日改めて連絡すると一言添えれば問題ないだろう」

「そうそう。入籍して間もないし、みんなおめでとうって祝福してくれるって」

お義父さまや真紘さんの言葉に、郁人さんは押し黙る。よほど私を連れて行くのが嫌なのだろう。

「みちるちゃんはどうだい? インフォーマルなパーティーだから気楽に出席してもらえるとうれしいんだが」

お義父さまに問いかけられた。

「私は郁人さんに従います」

郁人さんの出席は決まっているのだから、彼が同伴者を選ぶべきだ。

「……では、それで」

かなり渋々といった感じで郁人さんはそうつぶやき、私は彼とパーティーに行くことになった。

気が重くなりながら、彼と離れに戻る。

「今日の昼にデパートの外商を呼ぶから、パーティーに着ていく服を選んでおいて」

出社の準備をしながら告げられ、目を見開く。

「えっ」

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