君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
本音が溢れ出す
その後、私は二度と郁人さんの足手まといにならないよう、英会話とマナーのレッスンにより一層励んだ。

英会話は学校で習った英語とはまるで別物で、最初は苦戦した。でも我が家に来てくれているネイティブ講師は発音が完璧、言い回し方も自然で、コツを掴むと自分でも目に見えて上達がわかり、楽しく学べた。

マナー講座は、今まで自分がいかに至らなかったのかを痛感した。

一般的な礼儀作法さえあやふやで、初歩から教えてもらい、少しずつ身についてくると、自信を持てるようになった。

生まれや育ちはどうにもならないけれど、できる限りの努力はしたかった。

少しでもいいから、認めてもらえるように。

郁人さんと結婚し、二カ月半が過ぎたある夜。

郁人さんとお義父さまは会食で、夕食は真紘さんとふたりきりだった。

食後、真紘さんがエスプレッソ・マティーニを作ってくれるというので、母屋のリビングでいただくことになる。

少し前に欧米で食後の飲み物として流行し、今では定番になっているカクテルだそうだ。

ウォッカとコーヒーリキュール、シロップ、エスプレッソ、氷を入れ、真紘さんは手慣れた様子でシェイクした。シノワで漉しながらマティーニグラスに注ぎ、泡の上にコーヒー豆を三粒飾って完成だ。

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