君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「はい、どうぞ」

「わあ、ありがとうございます」

自宅で本格的なカクテルを作れるなんてすごい。あまりお酒は強くないけれど、見た目もおしゃれでとても興味をそそられた。

飲んでみると口当たりがよく、甘さと苦味のバランスが絶妙だった。

「どう?」

「おいしいです。濃厚なのに飲みやすくて、香りもいいですね」

「よかった。意外とアルコール度数は高めだから、酔っ払わないようにね」

そう言いながら、真紘さんはするするとカクテルを飲み干した。お酒には強いようだ。

「そういえばみちるちゃん、英会話とマナーのレッスンすごくがんばってるんだってね。佐藤さんから聞いたよ」

お手伝いさんの佐藤さんは、いつも私のレッスンを温かい目で見守ってくれているのだ。

「はい。郁人さんの妻として恥ずかしくない振る舞いができるようになりたいから……」

真紘さんは眩しそうに目を細める。

「健気だなあ。でもまあなんだかんだ兄さんとうまくいってるようで安心したよ」

もしかしてちょくちょく離れに来てくれるのは、私を心配してくれているからなのだろうか。

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