君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「大丈夫。もう一回ね」

真紘さんは呆れることなく丁寧に指導してくれた。

上達してくると、うれしそうに微笑みかけられる。

「みちるちゃん、飲み込み早い。すごく上手だよ」

握っていた手をぎゅっと掴まれ、いきなりくるくる回られた。

完全にレッスンからはずれ、真紘さんは遊びモードに切り替わる。

「真紘さん、目が回りそうです」

「えー、これくらいで?」

真紘さんと回転していると、自分が遊園地にある遊具のティーカップにでもなったみたいな気がしてきた。

「おまえたち、楽しそうだな」

そこへ、お義父さまの声がした。

振り向くと、リビングのドア前にお義父さまと郁人さんがいて、私は思わず固まってしまう。

以前、郁人さんから真紘さんはふたりきりになるなと言われている。もちろんそれは守っていて、室内にはお手伝いさんもいたけれど、郁人さんの目が怖かった。

「みちるちゃんにワルツを教えてたんだ」

真紘さんはふたりに告げた。

「ワルツ? 音楽もなしにか?」

「うん。思いつきだったから」

お義父さまの問いに答えながら、真紘さんは苦笑いする。

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