君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「すみません、大丈夫です。少し酔っているだけですから」

不謹慎だけど、胸がドキドキした。

少しでも私になにかあると、彼は必ず手を差し伸べてくれるから。

「酔う?」

「はい。真紘さんがカクテルを作ってくれて、一緒に飲んだんです」

そういえばアルコール度数が高めだと言っていたけれど、今頃酔いが回って来るなんて。

郁人さんはぐっと眉根を寄せ、歯噛みする。

「郁人さん?」

次の瞬間、腕を引っ張られ、ベッドの上に載せられた。

私を組み敷き、真上から見下ろしてくる彼は、とても怖い顔をしている。

「真紘の名前を出すな」

「え?」

「君は俺の妻としての自覚がないのか?」

「……あります」

だからこそ真紘さんに社交ダンスを教えてもらったのだ。

「俺の目にはそうは見えない」

「やっぱり私を疑ってるんですか? 私は本当に真紘さんを、んっ……!」

口を塞ぐようにキスされた。

初めての感触に、瞬きすら忘れてしまう。

彼は唇を重ねたまま、私のおなかのあたりに手を這わせてくる。

「やっ……!」

状況がわからなくて、激しい狼狽に襲われた。

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