君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「そんなにおもしろいですか……?」

心の底から可笑しそうで、私はいたたまれなくなった。

でも、とんでもないことをしでかしてしまったけれど、彼が嫌な気分になっていないのが幸いなのかもしれない。

「おもしろいよ。今まで生きてきた中で一番珍妙な経験だった」

「珍妙……」

ぽそっと復唱した私に、彼は笑い声を上げる。

まさかこんなに笑い上戸……いや、感情表現が豊かな人だと思わなかったけれど、楽しそうな彼につられて私まで顔がほころんだ。

「川を眺めながら、物思いに耽っていた」

彼はおもむろに語り始めた。

「物思い?」

「ああ。君に話しても?」

「もちろんです」

さっき私が質問した、『なにかあってここに来たんですか?』の『なにかあって』の部分について答えてくれるのだと、気を引き締めた。

「そんなに身構えなくていい」

彼は少し笑ってから、話を続ける。

「父の言いつけで、望まない結婚をする。俺の結婚相手は、父が長年想いを寄せていた女性の娘なんだ」

「え?」

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