君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
「元々父と母は政略結婚で、母は父を愛していたが、父に母への愛はなかったらしい。五年前に母が不慮の事故で亡くなったあと、父はその想いを寄せていた女性と交際を始めたようだ。再婚するつもりだったが、その女性もつい最近病気で亡くなり、父は本懐を遂げられなかった。そこで俺に彼女の娘と結婚するように命じたというわけだ」
すぐには理解できない内容だった。
彼の両親は政略結婚で、彼もまた父親の独断で結婚相手を決められるなんて、庶民の私には別世界の話だ。やはり彼はその見た目通り、上流階級の人なのだろう。
「しかもその女性というのが、母の親友だった。父とその女性は亡き母を裏切ったんだ」
彼は忌々しそうに吐き捨てた。息子として許せないのだろう。
「縁談を断れないんですか?」
「両親もまた祖父が決めた結婚だったし無理だろう。父は俺がなにもかも知っているとは思ってもみないだろうが、ぶちまけたところでどうにもできない」
「そうなんですね……。その娘さんとは会ったことはあるんですか?」
「二十年近く前、俺が小学生で向こうが一、二歳の頃に何度か会ったが、ほとんど記憶にない。覚えているのは名前くらいだ」
せめて彼がその娘さんと面識があればと思ったが、それもないようだ。
すぐには理解できない内容だった。
彼の両親は政略結婚で、彼もまた父親の独断で結婚相手を決められるなんて、庶民の私には別世界の話だ。やはり彼はその見た目通り、上流階級の人なのだろう。
「しかもその女性というのが、母の親友だった。父とその女性は亡き母を裏切ったんだ」
彼は忌々しそうに吐き捨てた。息子として許せないのだろう。
「縁談を断れないんですか?」
「両親もまた祖父が決めた結婚だったし無理だろう。父は俺がなにもかも知っているとは思ってもみないだろうが、ぶちまけたところでどうにもできない」
「そうなんですね……。その娘さんとは会ったことはあるんですか?」
「二十年近く前、俺が小学生で向こうが一、二歳の頃に何度か会ったが、ほとんど記憶にない。覚えているのは名前くらいだ」
せめて彼がその娘さんと面識があればと思ったが、それもないようだ。