君を愛せないと言った冷徹御曹司は、かりそめ妻に秘めた恋情を刻む
真紘は史乃さんが語った内容を、呆然と口にした。

「両親の件は彼女が勝手に調べたんだろう。会社に何度か電話があったようだが、まさかこんなことになっていたとは……」

俺はめまいを感じた。

たしかに結婚当初はそれに似た感情がなかったわけではない。

だが、史乃さんにはなんの関係もないし、俺のいないところで俺の気持ちを語る権利はなかった。

みちるを追い出し、真紘に親の秘密を暴露した史乃さんに強い憤りを感じたが、それ以上にみちるの行方が気になった。

一刻も早く捜し出さなければ。

「おまえたち、なにを言い争っているんだ」

そこへ父がやって来た。

どうやら俺と真紘の不穏な様子を心配した佐藤さんが父に連絡したようだ。

父の背後で佐藤さんが頭を下げて、そっとリビングを出て行く。

「ん? みちるちゃんはいないのか?」

リビングを見回す父に、真紘は鋭い目を向ける。

「出て行ったよ」

「出て行った? いったいどういう……まさか、郁人が持っているのは離婚届か?」

父は俺の手もとの用紙に釘付けになった。

「そうだよ。父さんが悪いんだ」

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