朝の光をあなたと感じて
帰っていく彼の後ろ姿に私は声をかけた。

「ありがとうございます。おやすみなさい」

彼は振り返って、ニッコリ笑い、手を振った。

ずっと胸がドキドキした。

家に入り、母からいくつか質問されたけれど、何も答えず……ただ彼の顔と手と声を思い出していた。

母はそんなにも酔っているのかと呆れて、聞くことをやめた。私はアルコールではなく、彼に酔っていた。

手を繋いで歩いただけなのに、彼のことしか考えられなくなっていた。

今日知ったのは、住んでいるマンション、年齢、苗字だ。

下の名前も知りたいな。今度会ったときに教えてもらおうと心に決める。
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