朝の光をあなたと感じて
帰ったら、母にお礼を伝えよう。

そんなことを思っていると、彼は腕時計を見てハッとした。

「ごめんね、行かないと仕事に遅れちゃうから」

「えっ、あ! そうですよね。お仕事、がんばってください」

「ありがとう。凛花も学校、遅れないようにね」

まるで以前からの知り合いのようにさらりと『凛花』呼びされて、胸がドキドキと速くなった。

片手を上げて、爽やかに去っていく姿をぼんやりと眺める。

きっと彼は朝のジョギングを終えてから、出勤するのだろう。スーツがよく似合いそう……見てみたい。

私よりも早くに動き出したルルにリードを引っ張られて、彼が行った方とは反対向きに散歩を再開させた。

「ただいまー」

「おかえり。いつもより遅いじゃない? 早くご飯食べなさいよ」

「うん……あー、私、今日は午後からだから、洗っておくよ」


慌ただしく動く母を横目で見ながら、私はのんびりとトーストにバターといちごジャムを塗る。

脳内では先ほどの彼との会話が何度も繰り返されていた。

「あ、そうだ。お母さん!」

「なあに?」
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