朝の光をあなたと感じて
おじさんとは、うちの父のような人のことを言う……。

私は胸元にあった手を横に振った。

「おじさんだなんて、思えません。いつもかっこいいお兄さんだなと……あ!」

思わず言葉に出した『かっこいい』を消したくて、私は手で口を押さえた。彼の耳には届いているだろうが。

かっこいい人に向かって、かっこいいと言ったのは初めてだ。本心ではあるけれど、なんだか恥ずかしい。

好意を抱いている人に告白してしまったかのようだ。

どうしよう。

これ以上話していたら、もっと恥ずかしいことを言いかねない。酔っているからか冷静になれない。

ここは、離れるべきだ。私は半歩下がって、頭を下げた。

「おやすみなさい。失礼します」

彼に素早く背を向けた。

しかし、腕を掴まれて、前へと進めなかった。

「ちょっと、待って」

「えっ?」

「家まで送るよ。心配だから、送らせて」

私は目をパチクリさせた。

思いがけない気遣いに、どう対応したらいいのか戸惑う。

いつも一人で帰っている道だ。今の時間よりも遅くなることもある。

だから、心配してもらわなくても大丈夫。
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