俺はずっと片想いを続けるだけ
旦那様は決して嫌いなタイプじゃなかったので、こんな事を言われなければ、普通にコトがあってもいいかな、と思っていたのですが。
 
でも、これなら妻の夜のお勤めをこれからも旦那様の方から無し方向へ、持って行っていただける感じです。

別に私はどちらでもいいのです。

旦那様が無事にトドメのお言葉をくださったなら私は直ぐに寝室から撤収して、メイドにお夜食を頼もうと、頭のなかはそちらへ。

(あまり脂っこいモノはダメね、果物かスープ……
うん、スープ頼もう!)

「だが、君がどうしてもと言うなら……」

(えっ、どうしたの?
『俺に愛されるとは思うな』と
『お前を愛するつもりはない』は、何処へ?)

「我が侯爵家の後継ぎは……き、君とっ!」

(そっち?そっちなの!
後継ぎの子作りだけはしてやるパターン?
白い結婚はどうなった?)

それだけは本当に勘弁して欲しかったのです。
旦那様に真実に愛してる方がいるのなら、
その御方にお役目はお譲りします。

私は慌ててベッドから降り、大きな泣き声をあげながら、旦那様の寝室から逃げ出しました。

「グ、グレイス、待って!」

勿論涙なんか出ていないので、声だけの迫真の演技です。
文字通り脱兎の如く、廊下を走り抜けました。

私、足の速さとキックの正確さには自信があります。
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