保健室の君。

毎週水曜の習慣

　先輩は食べるのが早かった。残ったお弁当を一人で食べていると、少し味が薄く感じた。

雲が太陽を隠したようで、お昼に保健室の窓から注ぐ日差しは弱まり、校舎の陰で保健室は薄暗くなる。

まあ、薄暗いとお昼は食べにくいが、持久走は暑さで体力を奪われずに済むだろう。

私はそんなことを考えながら、お弁当を食べ終えた。


　次の日は木曜日。久しぶりに親友の堀戸天音(ほりとあまね)が保健室にやって来た。

親友の天音はたまに私の様子を見に来てくれる、面倒見の良い女子だ。

「早弥、久しぶり」
「天音、久しぶり」

最近どう？　と二人の声が重なって、私達は同時に吹き出す。けらけらと笑う。

　天音は新聞部の部長で、校内の情報通だ。

たまに話を聞かせて貰えるだけでも、行けていない教室のことや学校全体の情報が得られる。

「梅雨入りしたら、体育館で球技なの？」
私達は、次の体育の種目の話をしていた。
「そうそう。今日はその球技で何をやるかってアンケートだったの」

男子で一人、サッカーと書いた生徒がいたようで、教室では盛大な笑い話になったようだ。

体育館の倉庫にあるボールとゴールで考えてくれ、サッカーボールもサッカーゴールも運動場と外の倉庫にあるだろうが、と体育の岡山先生に突っ込まれていたらしい。

　いつも、大した話は出来ないが、天音には保健室で私が見聞きした情報を話してウィンウィンの関係になっている。

今日は保健委員会の委員長と知り合って昼を一緒に食べた話、そこから３年生の体育が持久走という話をした。
「へえ、面白い出会いだね」

天音の最初の感想だった。天音曰く、何かの機会に委員長という立場上、宮下先輩を取材することがあるかも知れないから仲良くなっておいてくれとのことだった。

別になんという事は無い。天音なりの半分本気、半分冗談のいつもの会話だった。

　約一週間後、次の水曜日。昼休みにまた宮下先輩がやって来た。

今度はお弁当も、体操着も持っている。
「ここで食べてから行くわ」
とのことだった。