夏色モノクローム
「ほら」
「ありがとうございます」
出された緑茶は、とても綺麗な色をしていた。
互いにソファーに腰かけて、お茶を啜る。渋みがまるでないふわっとした甘い味が口内に広がり、里央は目を丸めた。
「おいしい」
「そうかい。そいつはよかった」
「普段飲んでる緑茶と全然ちがう」
「ははは」
声を出して笑う彼に、どきんとした。
彼は機嫌よさそうにゐなやのもなかの小分け袋を開ける。もなかの皮が二枚、細い和紙の紐で固定されているのを破り、上機嫌であんこを挟んでいる。
慣れた手つきだ。どうやら本気で、彼の好物だったらしい。
「――芸術学部生か?」
「え?」
「たまに、荷物。大きいの持ってるじゃねえか」
「あっ」
ちゃんと認識されていたんだととても嬉しくなる。
前期の金曜日は画材を使う授業があって、大きなカルトンバッグを持ってきているのだ。
「授業、9時からだろ? いつもずいぶん早いよな」
「朝の時間は静かなので、写真を」
「酔狂だな。んな面白いモンあるか? 猫くらいだろ」
「猫はたしかに可愛いですけど」
猫好きなんだと嬉しくなりながらも、ひとつだけ訂正を入れることにした。
「ありがとうございます」
出された緑茶は、とても綺麗な色をしていた。
互いにソファーに腰かけて、お茶を啜る。渋みがまるでないふわっとした甘い味が口内に広がり、里央は目を丸めた。
「おいしい」
「そうかい。そいつはよかった」
「普段飲んでる緑茶と全然ちがう」
「ははは」
声を出して笑う彼に、どきんとした。
彼は機嫌よさそうにゐなやのもなかの小分け袋を開ける。もなかの皮が二枚、細い和紙の紐で固定されているのを破り、上機嫌であんこを挟んでいる。
慣れた手つきだ。どうやら本気で、彼の好物だったらしい。
「――芸術学部生か?」
「え?」
「たまに、荷物。大きいの持ってるじゃねえか」
「あっ」
ちゃんと認識されていたんだととても嬉しくなる。
前期の金曜日は画材を使う授業があって、大きなカルトンバッグを持ってきているのだ。
「授業、9時からだろ? いつもずいぶん早いよな」
「朝の時間は静かなので、写真を」
「酔狂だな。んな面白いモンあるか? 猫くらいだろ」
「猫はたしかに可愛いですけど」
猫好きなんだと嬉しくなりながらも、ひとつだけ訂正を入れることにした。