夏色モノクローム
「芸術学部じゃないんです。教育学部、美術科。美術好きに毛が生えた程度です」
「あぁ、だからか」
「え?」
「へっぴりごし」
「む」

 なにか、突然、とても馬鹿にされた気がする。
 ……このひとは、もしかして写真とかにも詳しかったりするのだろうか。
 じーっと見つめて、彼の言葉を持つ。

「毎日同じ時間、定点撮影をする。こういうコンセプトはな、根性さえあれば成り立つ。写真の技術も何もいらねえ」

 コンセプト。そこをつっこまれて、里央は息を飲んだ。
 どうやらすっかり見透かされているようだ。

「しかもあんた、オートで撮ってるだろ」
「よくわかりますね」
「必要以上に片目つぶってるし。構え方も素人だ」
「……」
「安直な理由で、それっぽい写真をとってそれっぽいことをしている気分になる中途半端なカメラ好きかと思ったが」
「ふーんだ。どーせにわかですよ」

 全部が全部お見通しで、拗ねてみせる。
 先ほどもガキだと言い切られたが、これはガキだと言われるのも当然だ。里央よりも遥か高いところから、里央の行動を見ている。
 その言葉には経験に裏付けられた説得力があって――もしかしたら、そういう仕事をしているのかも、と察する。
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