夏色モノクローム
(まあ、この家と。志弦さんの服装が服装だもん。……全然不思議じゃないか)

 昨日と今日のたった二日。それでわかったこともある。
 にじみ出るこだわり。そして、彼に垣間見えていた几帳面さは何に由来するものなのか。

 そうだ。里央は所詮にわか。
 あの三叉路を撮りはじめたきっかけも、同科の先輩に「女子は空と動物と料理ばっか撮ってんだろ」って馬鹿にされたからだ。
 にわかながら、何かわかりやすい、自分らしい個性がほしかった。粋がった若者による浅はかな考え方に由来しているのは事実だ。
 でも――。

「にわかですけど、好きだからやってるんです。いいでしょ?」

 里央は笑った。
 だって、若者なのは事実だし、にわかなのもへっぴりごしなのも素人なのも事実。でも、毎日続けたことによって、大事なものだって見つけたのだから。
 しっかりと胸を張って見せると、志弦は面食らったように息を飲み、ふと、表情を緩めてくれる。

「そりゃあ、そうだ」
「ふふっ」

 ちゃんとわかってくれて嬉しい。里央の言葉を聞いて、理解しようとしてくれたところも好感が持てる。

「技術も知識もないにわかですけれど、楽しいからやってるんです。大学もそんなかんじ。興味のあることを、好きなままやっていける今の距離感が好きです」

 芸術一本でやっていく自信なんてこれっぽっちもない。でも、仕事のどこかでは触れていたい。
 将来のことなんてまだまだふわっとしていて、熱意は足りなく見えるかもしれない。
 でもいいんだ。自分はまだ、それくらいの、ふわっとした緩い人間でいい。
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