夏色モノクローム
(あ。でも、たまに猫の写真だけはアップされてるんだよね)

 背景は常にアスファルトだし、トラも錆びも色々いる。耳の形から、おそらく地域猫だと思う。
 さすがに身バレを注意しているのか、場所は分からず、ただただ猫のアップだ。きっと、かなりの猫好きなのだろう。

「現ノ最中……」
「そ。ご存じですか? 格好いい絵を描かれるんですけれど、お名前は可愛いんですよ、最中(もなか)って」

 丁度、もなかを食べているので、あえてかざして見せてみる。
 なぜか志弦は眉をぎゅっぎゅと寄せて、考え込んでいる様子だった。

「……それはなんだ。わざとか?」
「へ?」
「本気か。……うん。いや、なんでもない」

 ごほんと最後にひとつ大きく咳払いをする。それから肩をすくめ、里央に問うた。

「ガワだけの、格好つけた見せかけだけのイラストのどこがいいんだ」
「あ。まさかのアンチですね。最中先生のイラストが見せかけだけとか思わないですけれど」
「人にウケるためだけに、体裁を整えただけのイラストじゃねえか」
「うーん。私は、最中先生のイラストの、歪みが好きなんですけれど」
「歪み?」

 志弦がぴくりと片眉をあげる。
 なんだか、もっと聞かせろと言われているような気がして、里央は続ける。
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