夏色モノクローム
  ◆


 ――台風二号――現在北上――時頃には神奈――沿いに上陸し――

 朝。
 昨日一日、テスト疲れって言って部屋に引き籠もって、気がつけば朝になっていたらしい。昨夜は結局まともに寝付けず、ひどく体がだるい。
 外は曇っているのか、かなり暗い。今日は朝からずいぶんと天気が悪いらしい。

 ――各社は本日――より、それぞれ計画――を――

 母はもう起きているのか。階下からかすかにテレビの音が聞こえてくる。
 顔を洗って、髪の毛を梳かして、着替えて、メイクして。ぼんやりとしながら、里央はいつも通りの身支度をすませて家を出る。

 少し風がある。
 けれど、行かなくちゃ。
 まるで何かに取り憑かれたように、里央は駅までの道を歩く。

 電車は動いている。
 ただ、駅構内のアナウンスがいつもと違う。
 計画運休がどうとか。知らない。関係ない。

 あの三叉路に行かなくちゃ。
 もうすぐ七時半。今日は木曜日だからあの人は外には出てこない。それでも。

 上中里の駅に着き、ひとりぽつんと外に出る。
 今日は周囲に誰もいないくて、がらんとした駅のエスカレーターを登り、北口。

 風が強くなってきた。ぱらっと、雨粒の気配もある。
 ひとり曇り空の下、閑散とした道を歩き、脇道に入る。

 足が段々と重くなる。
 だって、いよいよ遠くに見えてきた。
 一方通行の標識。見慣れた三叉路。あの人の家。


 ――あ。
 一眼レフ、忘れた。

 ばかじゃん。
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