夏色モノクローム
「志弦さん」
私の名前、覚えてますか? なんて聞いたら、多分面倒な女だって思われる。……いや、もう十分思われている可能性はあるけれど、それでも。
半年前に何度か名乗ったきりだから、改めて、しっかり名乗ることにした。
「私、佐代木里央っていいます」
今さらの自己紹介に驚いたのか、彼が顔を上げてくれた。
黒縁眼鏡越しに、彼と目が合う。ダークブラウンの瞳が、ちゃんと里央を映してくれていて、そんな何気ないことが、ますます里央を緊張させる。
「佐々木の佐に代々木の代で佐代木です」
「……っ、…………そ、か」
あ。
今、彼の頬がひくっと動いた。
(ウケた……!)
どうしよう! たったこれだけでニマニマが止まらなくなってしまいそうだ!
これは普段から、自己紹介の時に使うお決まりフレーズだ。彼が噴き出しそうになるのを我慢したらしい仕草を見て、たまらなく嬉しくなる。
「ささきの、佐って――笹の字を書く可能性もあるだろ」
お堅くて几帳面な性格がにじみ出るツッコミをされて、ますます楽しくなってしまう。
なんだこれ。痛い思いはしたけれど、今日は最高だ。
私の名前、覚えてますか? なんて聞いたら、多分面倒な女だって思われる。……いや、もう十分思われている可能性はあるけれど、それでも。
半年前に何度か名乗ったきりだから、改めて、しっかり名乗ることにした。
「私、佐代木里央っていいます」
今さらの自己紹介に驚いたのか、彼が顔を上げてくれた。
黒縁眼鏡越しに、彼と目が合う。ダークブラウンの瞳が、ちゃんと里央を映してくれていて、そんな何気ないことが、ますます里央を緊張させる。
「佐々木の佐に代々木の代で佐代木です」
「……っ、…………そ、か」
あ。
今、彼の頬がひくっと動いた。
(ウケた……!)
どうしよう! たったこれだけでニマニマが止まらなくなってしまいそうだ!
これは普段から、自己紹介の時に使うお決まりフレーズだ。彼が噴き出しそうになるのを我慢したらしい仕草を見て、たまらなく嬉しくなる。
「ささきの、佐って――笹の字を書く可能性もあるだろ」
お堅くて几帳面な性格がにじみ出るツッコミをされて、ますます楽しくなってしまう。
なんだこれ。痛い思いはしたけれど、今日は最高だ。