センセイとわたしのただならぬ関係
「乗って」
 彼は運転席から身体をのばして、助手席のドアを開けてくれた。
「では、おじゃまします」

 そう言って乗り込んだとき、ドア枠に思い切り頭をぶつけてしまった。

「痛っ」

 そんなわたしを見て、先生はぷっと吹き出す。
「ぶつけるか、普通」

「人の不幸を笑うなんてひどい……」
「ああ、ごめん、ごめん」

 そう言って、この間の夜みたいに、またポンポンと頭を撫でる。

「よしよし。痛いの飛んでいけ」
「もう、完全にバカにしてますよね」
 わたしがふくれっ面になると
「そんなことないよ。可愛いなと思ってね」などとしらっと言ったりする。

 かっこいいバージョンの先生に、臆面もなくそんなことを口にされると、どうしても顔が赤くなってくる。

 でも先生は、可愛いと言ったことも、それを聞いてわたしが顔を赤くしたことも、まーったく気にしていない様子。
 完璧にガキ扱い。
 なんかちょっと悔しい。

 「よし、行くぞ」
 先生はエンジンをかけた。

 「どこに?」
 「着いてからのお楽しみ」と言って、いたずらっぽく笑みを浮かべた。
< 24 / 82 >

この作品をシェア

pagetop