センセイとわたしのただならぬ関係
「最初はどうなるかと思ったけど、よく頑張ったな」
 テスト返しのとき、先生はみんなには聞こえないような小声でそっと褒めてくれた。

 そんなことをされると、ちょっと顔がにやけてしまう。

 席に戻ると、千春にさっと答案を奪われた。
「わたしより点数いいじゃん。なんで急に古文に目覚めたんだよ、小春。あんなにできなかったのに」

 国語が得意で、いつも30点は差をつけていた千春が、謎の物体でも見るかのような目で、その答案を凝視している。

「そ、それは補習したくない一心で、頑張ったんだよ」

 千春はそんな言い分、これっぽっちも信じてない顔をして、わたしの目をじっと見た。
「わかった。あの日からだ。小春が謎の行動をとるようになったのは。突然、ツム(せん)のところに質問に行ったときから」

 ばくんと、心臓がはねる。
 だから鋭すぎるんだってば、千春は。

 千春はわたしに顔を寄せ「惚れたの? ツム先に」と囁いた。

「ほ、惚れてなんかないよー」
「その言い方、ますます怪しい」
「なんでわたしがツム先なんかに」
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