センセイとわたしのただならぬ関係
「ちょうど良かった。先生、わたしでも読める面白い本教えてくれますか」
「ああ、もちろん」

 うちの学校の図書室は授業で使う校舎とは別棟にあり、そのせいか、いつもすいている。
 今日も、来室者はほんの数人。
 みんな自分の興味のある本に気が向いているので、わたしと津村先生が並んで図書室に入っていってもとくに反応する人はいなかった。

 先生はわたしを、現代語訳つきの古典全集が並んでいる棚に案内した。
 書架のなかでも一番奥まったところだった。
「竹取物語から読んでみればいいんじゃないか。現存する日本最古の物語だ」

 竹取物語って……たしか、昔ばなしのかぐや姫のことだよね。

「先生、さすがにわたしでもかぐや姫は知ってますけど。それに中学で暗記したし。『いまは昔、竹取の翁ありけり……』ですよね」

「ああ。みんなそれで読んだ気になっちゃうんだよな。でも、この話はそれだけじゃないから騙されたと思って読んでごらん。これは注釈が詳しいから読み通せると思う」
「はい」

 わたしは素直に返事をして、先生からその本を受け取った。
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