センセイとわたしのただならぬ関係
 そこは詩歌の棚で、万葉集から現代の詩人の作品までずらっと並んでいた。
 先生の隣でわたしも書棚に並んだ本をなにげなく眺めていると、その場には似つかわしくない“チョコレート”というタイトルが目に飛び込んできた。

 なんで詩歌とチョコレートが関係あるんだろう?

 興味を覚えて、書棚から抜いてみた。
 すると、あきらかに他の本とは趣の違う表紙が目に飛び込んできた。

 それは、寝そべっている女性がこちらに誘うような眼差しを向けている写真。

「俵万智が現代語訳した与謝野晶子の『みだれ髪』だね」
 先生が背後から声をかけてきた。
「与謝野晶子って聞いたことある。たしか中学でも出てきた……」

「ああ、近代女性歌人のトップランナーだ。『みだれ髪』は初の歌集で、のちに夫になる与謝野鉄幹とのスキャンダラスな恋を詠んだものなんだ」
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