センセイとわたしのただならぬ関係
「へえ、恋の歌ばかりなんですか」
「うん、でも官能を描いた大胆な作品も多いから、梅谷にはまだ理解するのは難しいかもな」

 また、そうやって子ども扱いする。
 こういうときの先生はちょっと憎らしい。

「わたしだって、そのくらいわかるし」だって、今、恋してるから……
 その言葉は言わずに飲み込んだけれど。

 結局、竹取物語一冊だけ借りて、図書室を出た。

「じゃあな、また2学期に」
「はい」

 先生はいつものような優しい眼差しを向け、それからくるっと後ろを向いて職員室に向かっていった。
 わかってはいたけれど、誘ってはくれないんだ。

 先生が去ってゆく後ろ姿を見ていたら、切なさがこみあげてきた。
 心の奥でもうひとりの自分がわめいている。

 もっと話したい。
 もっといろんなことを教えてほしい。

 ちょっと意地悪で、でも根っこのところは優しさの塊みたいな先生が大好きだから。
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