センセイとわたしのただならぬ関係
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「で、いったい、何があったんだ?」
車に乗り込むとすぐ、先生はわたしに尋ねた。
「父に言われたんです。来年、18歳になったら、自分が決めた相手と結納を交わせと」
先生は一瞬、わたしが何を言っているのかわからないという顔をした。
「えっ? 梅谷の意思に反してってこと?」
「はい。その人は父の一番の部下で、彼に会社を継がせたいんです。だから有無を言わさずそうしろと。父は会社が第一でわたしのことは二の次だから」
「もしかして、あの時、いた人?」
「あ、はい。そうです」
先生はふーっと息をついた。
「そんな……家のために娘の結婚相手を決めるって、いつの時代の話だよ」
「時代錯誤ですよね、やっぱり」
ああ、そうだなと、彼は頷いた。
それから少しの間、彼は下を向いたまま、考え込んでいた。
そして、ゆっくり顔を上げると静かな口調で言った。
「だが、だからと言って、逃げればいいってもんじゃないよ。とにかく、今日は家に帰りなさい。もうこんな時間だ。お母さんにすぐ帰ると連絡を入れないと」