センセイとわたしのただならぬ関係
 今度は嬉しくなって、また涙が出てきた。

「梅谷、泣くな」
 先生は手を回して、わたしの頭を肩にもたせかけた。
 そして、ぽんぽんと子供をあやすようにわたしの腕を叩きはじめた。

 先生の温もりが伝わり、いいようのない安堵感に包まれていく。

 ああ、やっぱり、わたしはこの人が好き。
 どうしようもなく好き。
 ずっと、そばにいたい。

 そのとき、雨が降り出した。
 水滴が車の窓ガラスをみるみる濡らしてゆく。
 
 このまま、時が止まればいいのに。
 そうしたら、ずっとふたりでいられるのに。
 

「落ち着いたか」
 わたしは頷くと、先生は回していた腕を戻し、ハンドルを握った。

「住所教えてくれる?」
「はい」
 ナビに登録して、先生は車を出発させた。

 先生、なんでそんなに優しいの。
 なんとも思っていないのなら、逆に突き放してほしい。

 中途半端な優しさは残酷で、わたしの心にいっそう深い傷を残すのに。
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