センセイとわたしのただならぬ関係
 そう思ってまた、目に涙が浮かびそうになったとき、先生がふーっと漏らしたため息が、わたしの髪をゆらした。

 そして……

 えっ?
 気づいたら、先生の手がわたしのほうに伸び、引き寄せられ、抱きしめられた。
 さっき、慰めてくれたときとはくらべものにならないほど強く。

「先生……?」

 先生の鼓動、とても早い。
 
 わたしを抱きしめたまま、先生は呟いた。

「我慢してたんだ。本当は……ずっと、こうして抱きしめてやりたかった。店の前で心細げな顔で立ってる梅谷を見たときから」

 わたしは先生の顔を見上げた。
 先生は優しく微笑み、そして言った。

「好きな子が傷ついている姿を見て、普通でいられる男はいないからな」

 好きな……えっ、好きな子?
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