センセイとわたしのただならぬ関係

***

 先生は玄関口まで一緒に来てくれた。
 父に怒鳴られるかと思って身構えていたら、出てきたのは母だった。

「小春ちゃん、もう、どれだけ心配したか……」
「ごめんなさい。ねえ、パパは?」
「小春ちゃんを探しに行ってるわよ。さっき、連絡があったって電話したからもう帰ってくると思うけど」

「梅谷さん」
 先生は母の前に立って、改まった顔をした。

「お話したいことがあるのですが、今日はもう遅いので、できれば明日、お時間を作っていただけないでしょうか」

 先生の声の真剣な響きに 気圧(けお)されて、母も神妙な顔つきになった。

「わかりました。主人に伝えておきます」
 
 では、と先生は玄関を出た。
 わたしは後ろから声をかけた。
「先生、ありがとう」
「あんまり心配せずに眠れよ。じゃあ、おやすみ」

 先生は微笑むと、唇に手をあてて、投げキッスをした。

 わ、 気障(きざ)
 でも嬉しくって、顔がにやけてきた。
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