センセイとわたしのただならぬ関係
 翌日の午後、先生はわたしの家を訪ねてくれた。
 濃紺のスーツに同系色のストライプのネクタイを締めた、きりっとしたスタイルで。
 見惚れてしまうほどカッコいい。
 
 父ははじめ、今にも先生にとびかかりそうなほど険しい顔をしていた。
 教師が教え子に手を出すとは、いったいどういうことだ、と門前払いしかねない勢いだった。

「それは誤解です。誓って手は出していません。とにかく、話をさせてください。お願いします」
 先生は深々と頭を下げた。
「パパ、お願い」
 わたしも一緒に頭を下げた。

 父は渋い顔をしていたけれど、ともかく、先生を家にあげてくれた。

 先生は感情に任せず、理路整然と、これまでのことを語った。
 
 彼の真摯な様子に、父の態度もしだいに軟化していった。

「私は彼女を真剣に愛しています。小春さんが高校を卒業したら、正式にお付き合いさせていただきたいと思っています」

 そう言って、先生は頭を下げた。

「では、きみは教師をやめて、わたしの会社を継いでくれるというのか」

 いえ、と先生は身を乗り出した。
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