まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
驚いていたのも束の間、私同様驚きのあまり呆然と立ち尽くしていた巧さんの前で彼は立ち止まった。私も何が起こったのか分からず、頭が追い付いていなかった。
「彼女には二度と近づかないでいただきたい」
しかし彼の口から飛び出した台詞に小さく声が漏れだして、トクンと心が揺れ動く。牽制される巧さんは目を泳がせるだけで何も言い返せなくなっていた。
一哉さんの背中はどんどん遠のいていき、彼はマイクを持って話し出す。混乱する中、何食わぬ顔で始まったのは月島リゾート社長、月島一哉からの代表挨拶だった。
「あれは何かの悪い冗談ですよね。大掛かりなドッキリとか、からかって遊んでるとか」
「少しは静かにできないのか」
「だってこんなの」
まだ頭の中が混乱している。動き出す車の中、パーティーを終えたばかりだというのに涼しい顔で早速タブレットをいじり出す一哉さんを横目にちらりと様子を伺った。
月島リゾートと言えば、由緒ある老舗旅館から新時代に合ったリゾートホテルを次々に手掛けるいまやホテル業界トップ企業だ。
もう何十年もその唯一無二の月島ブランドを守り続け、【一生に一度は泊まりたいホテル・旅館ランキング】など名だたる特集にはランクイン必死の常連企業だ。社長はやり手だと聞いていたけれど、以前の雑誌記事を見たときはずっと大人の男性の写真が載っていた気がした。
「月島社長って、私てっきりもう少しご年配の方かと」
「それは父のことだな」
半信半疑になり、もじもじとしながら呟く私に一哉さんは間髪入れずに即答する。
「彼女には二度と近づかないでいただきたい」
しかし彼の口から飛び出した台詞に小さく声が漏れだして、トクンと心が揺れ動く。牽制される巧さんは目を泳がせるだけで何も言い返せなくなっていた。
一哉さんの背中はどんどん遠のいていき、彼はマイクを持って話し出す。混乱する中、何食わぬ顔で始まったのは月島リゾート社長、月島一哉からの代表挨拶だった。
「あれは何かの悪い冗談ですよね。大掛かりなドッキリとか、からかって遊んでるとか」
「少しは静かにできないのか」
「だってこんなの」
まだ頭の中が混乱している。動き出す車の中、パーティーを終えたばかりだというのに涼しい顔で早速タブレットをいじり出す一哉さんを横目にちらりと様子を伺った。
月島リゾートと言えば、由緒ある老舗旅館から新時代に合ったリゾートホテルを次々に手掛けるいまやホテル業界トップ企業だ。
もう何十年もその唯一無二の月島ブランドを守り続け、【一生に一度は泊まりたいホテル・旅館ランキング】など名だたる特集にはランクイン必死の常連企業だ。社長はやり手だと聞いていたけれど、以前の雑誌記事を見たときはずっと大人の男性の写真が載っていた気がした。
「月島社長って、私てっきりもう少しご年配の方かと」
「それは父のことだな」
半信半疑になり、もじもじとしながら呟く私に一哉さんは間髪入れずに即答する。