まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
 どうしてこの話を受け入れたのだろうか。会社を立て直すためと思ったら願ってもない話だし飛びついてしまうのかもしれない。

 しかし父だって長年会社を守ってきた社長としての目がある。だまされるような怪しい話を簡単に受け入れるはずがないとにわかには信じられなかった。

「月島リゾートがうちみたいに潰れかけの呉服屋を助ける義理なんてないでしょうし、他に無茶な条件でもつけたんじゃ」

 この契約書には不審な点はなさそうだし、そうだとしたら何か他にあったはずだと勘ぐっていた。

「鋭いな。でも鷹宮社長にはまだ、何も言っていない」
「まだ……?」

 すると書類がもう一枚差し出され、意味深な言い回しに引っ掛かり眉をひそめながら恐る恐る受け取った。

「それはこちらが提示する交換条件」
「え」
「ただそこにサインするのは鷹宮社長じゃなく、君だよ」

 愕然とする私は手元の書類に視線を落とした。

 そこに書かれていたのは【鷹宮結は、月島一哉のパートナーとして本契約締結より一年間夫婦になる】というものだった。


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