まもなく離縁予定ですが、冷徹御曹司の跡継ぎを授かりました
 どうにか平静を装おうと目を泳がしながら声を出したものの、太陽の光が差し込む明るい室内でははっきりと顔が見える。一哉さんは何も言わず綺麗な瞳でじっと見おろしてきて、そのうちはぁっと声を出した。

「夜通し探し回って、いい肉を食べるはずがコンビニのおにぎりだぞ。へとへとで仕事をする気にもならん」

 眉がぴくっと上がる彼に顔が引きつる。

 秋吉様のことで頭がいっぱいになって、お店を予約して私の誕生日を祝おうとしてくれた彼との約束をすっかり忘れて、しかも何の連絡もしなかった。どうにも申し開きできずにしゅんと反省する。

「こんなに綺麗にすっぽかされたのは生まれて初めてだよ」
「それはもう何と言ったらいいか」
「ちゃんと責任を取ってほしいものだな」

 彼のにやりとする不敵な笑みにどきっとした。首元の髪がさらりとなぞられ体中がぞくぞくする。目をつぶって次に何が来るのかと身構えていたら、彼はもぞもぞと動き出していつの間にかすっぽり布団をかぶって眠ってしまった。

「あの」

 拍子抜けして振り返ろうとしたら後ろからふんわりとした空気に包まれる。彼の吐息が耳元にくすぐったくかかって思わず固まった。

なぜこんなことになっているのか、このまま眠る気なのか。腕枕をされた状態で包まれたまま寝息がスース―聞こえてきて、なんだか力が抜けた。

「あったかい」

 もう少し、このまま。小さく呟きながらこっそり彼の手に触れた。



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