イケオジ紳士は年の離れた彼女を一途に愛し抜く
祖母との懐かしい思い出に浸っていると、しんみりした空気を振り払うように祖父が太ももを両手で叩いて立ち上がった。

「さあ、荷解きに取りかかるか」

今日の午前九時に引っ越し業者によって運び出された荷物は、すでに到着しているようだ。

「手伝うよ」

「ありがとう」

階段を上がる宗ちゃんと母親の後を、ひまりと手を繋いでついて行く。

二階には襖で仕切られた和室が二部屋あり、今日からここが私たち三人の部屋となる。

「おそとにでる」

東京ではアパートの一階で暮らしていた。

ベランダを珍しがるひまりを抱いて外に出ると、太陽の日差しを受けてキラキラと光る水面が目に映る。

「ひまり、海が見えるよ」

「えっ? どこ?」

「そっちじゃなくて右の方だよ」

まだ右も左もわからないひまりに、海が見える方角を口だけで説明するのは難しい。

辺りをキョロキョロ見回すひまりにもどかしさを感じていると、宗ちゃんがベランダに出て来た。

「ひまりちゃん、おいで」

「うん!」

差し出された宗ちゃんの両腕にひまりが手を伸ばすと、小さい体が宙を舞う。

「ほら、海はあっち。見えたかな?」

ひまりを軽々と抱き上げて肩車をした宗ちゃんが、海に向かって指をさす。

「うん! みえた!」
< 11 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop