イケオジ紳士は年の離れた彼女を一途に愛し抜く
宗ちゃんの肩の上ではしゃぐひまりの様子を見た瞬間、懐かしい記憶がよみがえった。

あれは、ひまりが生まれる前。私がまだ幼稚園に通っていたときのことだ。

お気に入りの朝顔柄の浴衣を着て、親子三人で地元の花火大会に繰り出す。

たこ焼きと焼きそばを食べて、わたあめを買ってもらってご機嫌だったのも束の間、打ち上げ場所である河原に着く前に花火が上がってしまった。

お腹に響くようなドンという大きな音は聞こえるのに、通りを埋め尽くす人で肝心の花火が見えない。

これじゃあ、絵日記に花火が書けない。

思わず涙が込み上げてきたとき、空中に体がふわりと浮かび上がった。

「あかり? 見えるか?」

「みえる!」

音だけしか聞こえなかった花火も、父親の肩の上からだとハッキリ見える。

「あかり、よかったわね」

「うん!」

肩車された私を見上げて微笑む母親に向かって、興奮しながら大きくうなずく。

私を担いでもビクともしない父親の力強さと、打ち上がる花火に照らされた母親の笑顔は今も鮮明に覚えている。

もう家族揃って出かけることも、笑い合うこともない。

物悲しい気持ちが胸に広がっていくのを実感していると、ベランダにいる私たちを呼ぶ声が聞こえた。

「さあ、始めるわよ」

「はい」

母親に返事をして部屋に戻る。
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