イケオジ紳士は年の離れた彼女を一途に愛し抜く
立派なマンションには住まずに家の建て替えを勧めるのは、ひまりの転校を避けるため。

『転校なんてしたくなかった』と言って泣いた私と同じ思いをさせないように、気を配ってくれる優しさがうれしい。

「ダイニングキッチンとリビングを二階にすれば光を取り込みやすいし、俺たちの部屋とひまりちゃんの部屋の間に階段を設ければプライバシーを守れる」

一級建築士である宗ちゃんの説明はとてもわかりやすく、建て替えた家で暮らす三人の姿が容易に想像できる。

「あのね。私、白亜の家に住んでみたかったの」

「湘南の青い海に映える白亜の家か。いいね」

幼い頃からの憧れを語るひとときを楽しく思いながら、ふたりで微笑み合う。けれど、その充実した時間も長くは続かなかった。

ひまりとふたりでつつましく暮らしていても、貯金ができるほど私のお給料は多くない。

先立つものがない私にとって、家の建て替えは夢物語でしかないのだ。

「来年の四月にひまりは中学生になるでしょ。制服と体操着を揃えなくちゃならないし、修学旅行の積み立ても始まるし、塾に通いたいって言い出すかもしれない。宗ちゃんが考えてくれた新しい家はとても素敵だけど、建て替える余裕なんてないよ」
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