イケオジ紳士は年の離れた彼女を一途に愛し抜く
「二十四日は仕事だし、宗ちゃんだってクリスマスイブを一緒に過ごす女性(ひと)くらいいるでしょ?」

私が寂しくないように気を遣ってくれるのはうれしいけれど、こちらの都合も聞かずに話を進められては困るし、今年のクリスマスイブは土曜日。幼稚園や学校は冬休み期間でも保育園は通常保育だ。

「残念ながら、こんなオジサンに興味を持ってくれる女性なんていないよ。それに仕事が終わってからでもディナーは充分間に合う」

宗ちゃんがテーブルに頬杖をついてニコリと笑う。

彼は新卒入社した大手設計会社を三十歳のときに退社して、あじさい寺として有名な明月(めいげつ)(いん)がある北鎌倉に『桜庭建築設計事務所』をかまえた。

社長であり、イケオジの宗ちゃんは絶対モテるはず。それなのに独身を貫くのは、今でも初恋相手である母親を忘れられずにいるからだと私は思っている。

「当日は午後五時すぎに保育園まで迎えに行くよ」

なんの相談もなく待ち合わせ場所と時間を決められて戸惑ったものの、別に宗ちゃんと出かけるのが嫌なわけじゃないし、この期に及んで断るのも気が引ける。

「うん、ありがとう。よろしくお願いします」

「こちらこそ」

仕事が終わる時間を見計らって、職場まで迎えに来てくれると言う彼に頭を下げて微笑み合う。

家族以外の人とクリスマスイブを過ごすのは初めて。

宗ちゃんがどこに連れて行ってくるのか期待して、途中だった料理を口に運んだ。
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