イケオジ紳士は年の離れた彼女を一途に愛し抜く
私たちの関係を内緒にしていたのは、多感な年頃のひまりをあまり刺激したくなかったから。

小学六年生のひまりが〝泊まる〟という意味をどこまで理解しているのかわからないけれど、プロポーズを断った手前、付き合っていたと認めるわけにはいかない。

「宗ちゃんがお酒を飲んじゃったから泊まっただけで、別に付き合っていないよ」

苦し紛れの言い訳だと思っても、もう後には引けない。

平静を装って、夕食の準備に取りかかる。

「お姉ちゃんは宗ちゃんを好きじゃないの?」

「宗ちゃんのことは、頼れるお兄ちゃんのように思っている」

ひまりの質問に答えるたびに胸がチクリと痛むのは、彼を好きだという気持ちを心の奥に封印できずにいるからだ。

「宗ちゃんはお姉ちゃんを好きだと思うけどな」

好きな人にチョコレートを渡せないバレンタインデーなんて、永遠になくなってしまえばいいのに。

口にできない思いを飲み込んで、ひまりのひとり言のような言葉を聞いた。
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