色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
 うつむいたかと思えば、大きな目でこっちを見る太陽様の視線が痛い。
「そういえば、先生って最近この町に引っ越されたんですよね?」
「え?」
「いや、先生みたいな美人な人が昔からいたら、すぐに気づくから」
「北部の田舎ほうで暮らしていたんですが、夫が亡くなって色々あって、居場所がなくなってしまって。だから、親戚が所有していた今の家を譲り受けて…引っ越したという感じで」
 しどろもどろで話していて、ふと気づく。
 目の前にいる人は領主の弟だ。
 つうか、私に訊かなくても調べればすぐにわかるのでは?
 というか、わかっていて。わざと聞いているのか。

 何も考えていなそうに見える太陽様が急に怖く感じる。
「そうなんですね」
 太陽様は「ふうむ」と考え込むしぐさをするので。
 心臓がバクバクする。
 怪しい者だと思われているのだろうか。

「あの、シナモンさんって先生の娘さんですか?」
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