色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ

ピアノの依頼

 太陽様は、面白くて。
 とても正義感のある良い人だっていうのは知っている。
 けど、会話が成立しないというか、突拍子もないことを言い出す癖があるのか。
 一体、何を考えているのかわからない。

「ああ、つまんない。課題曲とか、むりい」
 楽譜を睨みつけるイチゴに、私は「まあまあ、お上手ですよ」と、心の中ではムキーと怒りながらイチゴを褒める。
 今日は珍しく、レッスンをサボらずに来てくれている。
 相変わらず、人の言うことは聞いてくれないけど練習はしているようだ。

 30分のレッスンを終えて「ごきげんよう」と言って家を出るとすぐに、「先生、レッスン終了っすか?」と言って近寄って来たのは太陽様だった。
 礼拝堂で会ったときは顔色が悪かったくせに、今日はいつも通りの太陽様だ。
「こんにちは、太陽様」
 町を巡回中なのか、いつものようにダッサい紫色の制服を着ている。
 太陽様はニコニコしながら、
「先生、ピアノの依頼をしてもいいですか?」
「ピアノの依頼?」
「はい、俺の幼なじみの家なんですけど…」
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