色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
 領主の屋敷を出て、速足で歩く。
 家までは歩いて帰るしかなかった。
 帰るまでの間、本当に腸が煮えくり返る思いだった。
 何が色仕掛けだ…
 オバサンじゃないし、まだ19歳だし。

 2時間かけて家に戻る頃には、夕暮れになっていた。
 さすがに疲れて、「あー疲れた」と声に出して家に入ろうとしたとき、
 いつもと違う・・・異変に気づいた。

 まず、玄関のドアが全開だった。
 必ず閉めてあるはずなのに、何故だろうと思った。
「ただいま」
 迎えてくれるはずのシナモンの姿がない。
 おかしい…と思った。
 何かがおかしい。
「シナモン、いないの?」
 廊下を歩いてすぐに、リビングルームがあるのだが入った瞬間「ぎゃー」と悲鳴を漏らす。
 ソファーの表面が切り刻まれている。
 壁に飾ってある絵画が破られている。
 ダイニングルームに行くと、テーブルに飾られてあるはずの花が花瓶ごと倒れ、
 食器棚の中身は全部外に落とされて、皿は割れている。

 泥棒だ…と直感的にわかった。
 我が家は泥棒に入られたんだ。
「シナモン?」
 嫌な予感がして、2階に走ってすべての部屋を見て回ったが、どの部屋も荒らされていてシナモンの姿はなかった。
 1階に降りて台所もシャワールームにもシナモンの姿はない。

 最後に見たくはなかったけど。
 ピアノが置いてあるだけの部屋を覗くと。
 シナモンの姿はなく、グランドピアノがそれは綺麗に…見事に真っ二つに割れて壊されていた。
 ピアノが壊されているのを見た瞬間、目の前の景色が一瞬で真っ白になった。
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