色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
「大丈夫ですか、先生、エアー先生」
誰かが自分の頬をひっぱたく。
ゆっくりと目を開けると、男の人が自分の顔をのぞき込んでいたので、「きゃあ」と言って男の人の手を払いのけた。
窓から入り込む太陽の光。
光は真っ二つに破壊されたグランドピアノを当てている。
よろめきながら立ち上がろうとしたが、足がもつれる。
ショックのあまり、気絶していたんだ…
「エアー先生、大丈夫ですか?」
甘ったるい香水の匂いをぷんぷんさせながら、視界に入ったのはジャックさんだった。
「なんで…ジャックさんが?」
国家騎士団の制服を着て、女性に好かれそうなイケメンで…。
「通報がありましてね。近所に住んでる…えっと、アンナ夫人でしたっけ? お宅から怪しい男達を見たとか、悲鳴が聞こえたとか…」
アンナじゃなくて、アンズ夫人だよと突っ込もうとしたが、すぐにシナモンが頭をよぎった。
「あっ…、ジャックさん。シナモンを見ませんでしたか?」
「シナモン?」
「私の侍女です。年は16歳くらいで、可愛い子です」
心臓がばくんばくんと波打つ。
気絶している場合じゃなかったのに。
「先生の侍女ですか。今、捜索します」
…何をのんびりとした口調で言っているのだろう。
ぐしゃりと座り込んだ。
シナモンが連れ去られたのなら、もっと焦って探してくれよ。
こみあげてくる怒りに、思わず拳で床をバンバン叩いた。
「…すいません。エアー先生。ついてきてくれます?」
怒りで震えている私を黙って見ていたジャックさんが言った。
言われるがまま、馬車に乗り込んで、今更ながらに気づく。
「なんで、民間の騎士団じゃなくて、国家騎士団の人間が来るんですか?」
「ここらへんの騎士団の親玉はミスターナイトでしょ? つかいもんにならないからですよ」
アハハと笑ってジャックさんが言った。
ぞっとしたけれど、もう考える気力はなかった。
馬車は一時間ほど走り抜けると止まった。
ジャックさんにエスコートされて降りる。
「え・・・」
目の前にあるのは、城だった。
誰かが自分の頬をひっぱたく。
ゆっくりと目を開けると、男の人が自分の顔をのぞき込んでいたので、「きゃあ」と言って男の人の手を払いのけた。
窓から入り込む太陽の光。
光は真っ二つに破壊されたグランドピアノを当てている。
よろめきながら立ち上がろうとしたが、足がもつれる。
ショックのあまり、気絶していたんだ…
「エアー先生、大丈夫ですか?」
甘ったるい香水の匂いをぷんぷんさせながら、視界に入ったのはジャックさんだった。
「なんで…ジャックさんが?」
国家騎士団の制服を着て、女性に好かれそうなイケメンで…。
「通報がありましてね。近所に住んでる…えっと、アンナ夫人でしたっけ? お宅から怪しい男達を見たとか、悲鳴が聞こえたとか…」
アンナじゃなくて、アンズ夫人だよと突っ込もうとしたが、すぐにシナモンが頭をよぎった。
「あっ…、ジャックさん。シナモンを見ませんでしたか?」
「シナモン?」
「私の侍女です。年は16歳くらいで、可愛い子です」
心臓がばくんばくんと波打つ。
気絶している場合じゃなかったのに。
「先生の侍女ですか。今、捜索します」
…何をのんびりとした口調で言っているのだろう。
ぐしゃりと座り込んだ。
シナモンが連れ去られたのなら、もっと焦って探してくれよ。
こみあげてくる怒りに、思わず拳で床をバンバン叩いた。
「…すいません。エアー先生。ついてきてくれます?」
怒りで震えている私を黙って見ていたジャックさんが言った。
言われるがまま、馬車に乗り込んで、今更ながらに気づく。
「なんで、民間の騎士団じゃなくて、国家騎士団の人間が来るんですか?」
「ここらへんの騎士団の親玉はミスターナイトでしょ? つかいもんにならないからですよ」
アハハと笑ってジャックさんが言った。
ぞっとしたけれど、もう考える気力はなかった。
馬車は一時間ほど走り抜けると止まった。
ジャックさんにエスコートされて降りる。
「え・・・」
目の前にあるのは、城だった。