色褪せて、着色して。~悪役令嬢、再生物語~Ⅱ
 悲しい。
 この国に来たときにはなかった感情。
 悔しいという気持ちが強かったのに。
 テイリーと再会したら、悲しいという気持ちがグツグツと湧き出てきた。

 目の前から、まばたきする間もなく・・・一瞬でテイリーが消えて。
 しばらくボーとしていたら、
「さっ、セシル様。身支度しますよ!」
 元気いっぱいにシナモンが入って来た。
 シナモンは、人間サイズのときは茶色い髪に茶色い瞳だったはずなのに。
 妖精サイズの姿と同じでピンク色の髪の毛に真っ赤な瞳に姿を変えていた。
「セシル様が元の姿に戻るということで、わたくしも本来の姿に戻ります」
「…シナモンの適応能力、早すぎじゃない?」
 鏡台にある鏡を覗くと、40代だった私は元の姿に戻っている。

「魔法って何か呪文をとなえるのかと思っていたけど、違うんだね」
 知らない間に、魔法が解かれていることに驚く。
「テイリー様ほどの魔力となれば、呪文も杖も使いませんよ」
「…やっぱり、テイリーって凄いんだ」
< 56 / 64 >

この作品をシェア

pagetop