11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
こんなふうに、心が乱されるのはわたしだけ。
真人さんの一挙手一投足に泣き笑いして……。
それなのに、彼はわたしが何をしても何を云っても、顔色ひとつ変えない。
悔しい……。
わたしだけが好きで、好きで。大好きで。
どれだけ伝えてきても伝わらず、本気で取り合ってくれたことがない。
そして、真人さんは幸せになろうとしている。
幸せにはなってほしい。
ほしいけど……。
妬ましくて、羨ましくて、くやしくて……。
だから。
わたしは最後の最後に、彼に爪痕を残したくなった。
「指輪……選んだお礼?なら……」
わたしは、真人さんをまっすぐに見てこう伝えた。
「2月14日、土曜日でお休みだよね?……その日…
付き合ってくれる?」
「あー……」
彼女持ちなら当たり前だけど、真人さんはやっぱり渋った。
「その日、昼間から夜は予定があるんだ」
「その後で、いいから!」
わたしは必死に食い下がった。
「絶対、真人さんには迷惑にならないようにするから……だから、お願い!…最後の、わがままだと思って……」
思わず涙を流しながら言えば、真人さんはため息をついて「わかった」と観念したように言ってくれた。
(ごめんね、真人さん……これで……本当に最後だから……)