11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白

「ねぇ、誰か待ってんの?よかったら飲みにいかない?」
「えっ?」

自分に声をかけられた、とはわからなくてきょろきょろと周りを見回すと、声をかけてきた男性に吹き出された。

「アハハ!おもしれ~、あんただよ。あんた」
「え、わ、わたし…?」

刺繍入りのダウンジャケットにダメージジーンズに金髪にピアス。少々のメイク。いかにもチャラそうな男性に、笑われてきょとんとしてしまう。

今まで、男性に声をかけられた経験がなかった。
いつもは隣の麗奈目当てばかりだったし、わたしも真人さんにしか眼中になくて頑なだったからかもしれない。

「わたしあの…予定が…待ちあわせがあるので…ごめんなさい!」

ペコリ、と頭を下げると、ますます大きな声で笑われる。そんなに可笑しなことをした覚えはないんだけど…。

「あー、可笑し!ね、あんた。よかったらLINE交換しねえ?後で連絡くれよ」
「あ、はい…」

真人さんを忘れるなら、他の男性と交流を持った方がいいよね?そう思ってスマホを取り出した。

「QRコード使おうぜ」
「QRコード?」
「あんた、知らんの?マジおもしれー」

また、笑われた。ちょっと失礼じゃないか…と思うけど、QRコードの出し方を丁寧に教えてくれたから、案外良い人かもしれない。

「んであんたのQRコードをオレがスマホで読み込めば…っと!?」

突然、男性のスマホがスルッと移動した。


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