11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
男性の姿は人混みに消えたのに、それでもまだ真人さんは睨みつけている。
「……真人さん?」
こんなに厳しい雰囲気を纏う彼を見たのは初めてで、戸惑いながら声をかけると、彼はハッと我に返ったのかいつもの優しい笑みを浮かべた。
「ごめんね。ぼくが遅くなったばかりに…あんな変な輩を君に近づけさせてしまった」
やから?とは意味がわからないけど、大丈夫だとアピールしたくてLINEの画面を見せた。
「でも、LINEの操作方法を教えてくれましたよ?ほら、QRコードも出せるようになりました。親切な人でしたよ?…え?」
笑顔のまま、真人さんはその画面を消してきた。
「あんな下心見え見えのナンパ男、相手にするだけ時間の無駄だよ」
「でも……!」
「それより、腹が減ったから食事に行こうか」
「えっ?」
食事…??
美穂さんと食べたんじゃないの?
真人さんはわたしの手を取ると、片手を上げてタクシーを呼ぶ。そのまま車内に押し込まれ、着いた先に驚いた。
市内でも屈指の高級フレンチレストラン。
しかも席をリザーブしてあったらしく、混んでいてもすんなりと店内に通された。