11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
「ごめんなさい、真人さん……わがままでせっかくの彼女との時間を邪魔しちゃって。ここのレストランだって、彼女と来るはずだったんでしょ?」
「美幸ちゃんはそんなこと気にしなくていいよ……オーダーはどれにする?」
やっぱり、真人さんは穏やかに笑って、相手にしてくれない。わたしが精一杯のオシャレをしても、彼の目の色は優しいまま……。
外見的にも、内面的にも、わたしには何ひとつ彼を惹きつけることは出来なかった。
ワインの銘柄やメニューを流暢な発音で真人さんがオーダーしてるけど、わたしは何ひとつ知らないしわからない。そんな幼さと世間知らずで、よく真人さんに告白できるな……と、自虐的に自分を嘲笑った。
「食前酒にはスパークリングワインにしておいたけど、飲めそうかな?」
「…大丈夫です!」
本当はお酒はほとんど飲んだことはないし、弱いのはわかってるけど。もはや、意地だった。
最後くらい、彼に合わせて少しは大人っぽく振る舞いたかった。
こんな機会は最初で、最後…なんだから。