11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
さよなら
食前酒が来る前に、わたしは最大の目的を果たすためにラッピングした紙箱をテーブルの上に出す。
手のひらは緊張で汗ばみ震える。心臓はうるさいくらい、ドクンドクンと鳴り、呼吸が浅く速くなる。
逃げたい……でも、言わなきゃ、終われない。
わたしの10年分の想いの決着を、着けるために。
彼と想いと……さよなら、するために。
怖くて真人さんの顔が見れずに、顔を伏せたますう、と深呼吸して一度まぶたを閉じる。
(大丈夫、大丈夫。もう、最後……これっきりなんだから。これで終わりなんだから!)
胸に手を当てて、落ち着けと自分に言い聞かせる。少し鼓動が落ち着いたころ、まぶたを開き勢いよく顔を上げて真人さんを見た。
彼は、いつもと変わらない穏やかな優しい笑み。
変わらない…悲しいくらいに変わらない。
でも、とわたしは一度開けた口をキュッと閉じてもう一度深呼吸。
(大丈夫……わたしは大丈夫)
そして、キッと真人さんをまっすぐに見据えて彼に最後の告白をした。
「真人さん、好きです」