11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
「ありがとう、嬉しいよ」
真人さんからの反応は……やっぱり、だった。
一字一句、10年間なにも変わらずに。
……笑顔も表情も…何ひとつ、変わらずに。
わたしの想いは砕け散った。
ググッ、と涙を必死にこらえた。
(泣くな…泣くな!これからもっと大変なことを言わなきゃならないんだから…)
奥歯を食いしばり、なんとか涙を流さずにおいた。
「でも、美幸ちゃん」
「真人さん!」
彼がなにか言いかけたけど、どうせ傷口に塩を塗るだけだろう。なら、聞きたくない。だから、わたしは真人さんに最後のわがままをぶつけた。
「……もう、わかってます。真人さんの気持ち……もうすぐ結婚する人に言っても仕方ないって……でも、どうしても言いたかったんです!」
「……美幸ちゃん」
美幸“ちゃん”ーー。
最後の最後まで、彼はわたしを子ども扱いだ。
でも、わたしだって……。
「わたしだって……女、です」
こらえたはずの涙が、あふれてきた。
「お願いです…これで諦めますから……最後に一度だけ、思い出をください……本当に最後にしますから……」