11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白
「……こ、こんな高そうなホテル…む、無理です」
国外のVIPすら利用する、超がつく一流ホテル。
荷物を運ぶポーターやホテルマンが当たり前にいて、正面玄関からしてお城のような豪奢な造り。
車止めにタクシーが止まった時も、わざわざお迎えの人がいて…。
降りた瞬間にあまりの威容に足が竦んでしまった。
「大丈夫。猫とでも思っていればいい」
「……高そうな猫、ですね…」
たぶん、真人さんも冗談のつもりだっただろうけれども。まったく笑えなくてよりガチガチに緊張してしまった。
専用フロア直通のエレベーターなんて、初めての経験だ。何もかも珍しいけど、見て楽しむ余裕は一切ない。
案内されて足を踏み入れたのは、ぎょっとするほど広いフロア。そして、そこがすべてロイヤルスイートルームの部屋だと知って、頭がフリーズしそうだ。
「外、見てご覧」
「……わぁ」
一面ガラス張りの窓の外には、海に面したふ頭の夜景が見える。キラキラキラキラ、夜の水面に反射して宝石のように輝いていた。
「……綺麗」
「……君だって、綺麗だよ」