11年目のバレンタイン〜恋を諦める最後の告白

「……お願いだ。逃げないでくれ」

耳元で囁かれた声は、切なく哀願するような響きで。
真人さんは、ずるい。
そう言えば逃れられないのを知ってるみたいに、たったひとことでわたしを縛り付ける。

でも、とわたしは首を横に振る。

(なんのためにこんな遠くに来たの……忘れないで。わたしはフラレてるし、この人は他の女性の夫なんだから)

「……何の用ですか、真人さん」

なるべく冷たく、突き放すように彼に言った。なのに、真人さんはわたしを離そうとしない。

「ずっと探してた……麗奈は君をもて遊んだんだと怒って教えてくれずに…ずっと自力で。ようやく探し当てたんだ。なぜ、ぼくの前から姿を消したんだい?」

はぁ?と思わず声が出そうになった。

「なに……言ってるんですか?真人さん……あなたはわたしを何回ふったか知ってます?11回ですよ!?10歳のバレンタインデーから、毎年…毎年。最後のバレンタインデーだって…どれだけわたしが傷ついたか。それに、あなたは結婚が決まってたじゃないですか!」
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